このサイトのレビューは文体も語り口も切り方も作品によって様々です。この作品のように付き合いの長い作品になると、自分の個人的な体験とシンクロさせながら語っていくという手を使っています。レビューというのは、単なる作品の紹介ではなくて、評者の主観の産物です。それを第三者が公平に判断できるように提示しようと思えば、客観的な（に見える）書き方よりも、評者がどのようなバックグラウンドを持ってこの作品を読んだか、ということを示した方がいいのではないか、と思っています。でも、そこまで自分で追求できるのはかなり限られた作品で、いつもそうはできていないのがつらいところ。
一方、こちらのレビューは、ちょっと禁じ手を使ってしまいました。完全に作品に没入して、自分なりにスケッチしてみるという手法。ただ、緑川さんの作品の魅力は、離れたところからでは見えないのではないか、と思ったのですね。なんていうんだろうなあ、言葉で説明できない物事を身振り手振りで伝えようとしている、そんなレビューです。
うまくレビューが書けるか書けないかは、だいたいうまい切り口が見つけられるかどうかにかかっています。これは、田中メカ＝人情もの＝新喜劇という切り口だけでなんとか書き上げたレビュー。ただ、作家さん単位で切り口を見つけてしまうと、その人の他の作品のレビューが書きにくくなる、という問題もあったりして。